首都マグニチュード7.3 甚大な被害想定/最新情報

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首都マグニチュード7.3 甚大な被害想定

9月1日は「防災の日」。94年前に関東大震災が起きた日です。日本は、地震、津波、噴火、洪水、土砂災害など様々な自然の脅威にさらされています。6年前に起きた東日本大震災をはじめ、大きな災害が起こるたびに、被害の想定や情報の出し方が見直されてきました。どんなリスクや課題があるのか、読み解きます。

◆首都マグニチュード7.3 甚大な被害想定

関東大震災が起きたのは1923年9月1日午前11時58分。神奈川県から千葉県にまたがる震源域が動いたマグニチュード(M)7.9の巨大地震だった。死者・行方不明者は10万5千人を超えた。多くは火災に巻き込まれた人だった。

当時、台風の影響で強い風が吹いていた。各地で火が燃え広がり、東京や横浜の市街地計40平方キロメートル以上が焼失。東京・隅田川近くの空き地では、逃げ場を失った4万人近くが命を落とした。建物の倒壊でも1万人以上がなくなり、土砂崩れや津波の被害も相次いだ。

「首都直下地震」は、今後30年以内に70%の確率で起こると言われている。関東大震災が起きた94年以前に比べれば、現在の建物は強くなったものの、人やモノ、機能が集中し、高度に発達した首都が大地震に見舞われれば、被害は甚大で影響は全国に及ぶ。

死者2万3千人、経済被害95兆3千億円ーー。国の中央防災会議は2013年、首都直下地震の最大の被害をこう想定した。

首都直下地震の被害想定.png南関東の1都3県の3割の地域が震度6弱以上の揺れに襲われる。交通まひで消火や救助は滞る。17万5千棟の建物が全壊し、7万2千人の救助が必要になる。焼失は41万2千棟にのぼり、1万6千人が火災で亡くなる。買い付けが起きて生活物資は全国で不足し、断水や停電で避難者は2週間後に720万人に膨らむ。輸出入も落ち込むなどして、日本の国際競争力が下がったままになる可能性もあるという。

もっとも、これは都心南部直下でM7.3の地震を仮定した一つのケースに過ぎない。関東地方は三つのプレート(岩板)が重なる複雑な場所で、どこで地震が起こるかはわからない。茨城県南部や千葉市直下、横浜市直下など、様々な震源から特に影響の大きいケースが選ばれた。

70%というのも、都心に限らず東京近辺のどこかでM7級の地震が起こる確率だ。過去には平均で27.5年に1回起きてきた。

「我々が生きているうちに起きることは過去の例からみて不思議なことではない。備えなければ被害が大きいことはわかっている」。21日にあった地震予知連絡会後の記者会見で、平田直・東京大学教授は備えの必要性を強調した。

東京都の住宅耐震化率は8割台で、火災に弱い木造住宅密集地域の対策も道半ばだ。中央防災会議は、耐震化率が100%になり、出火対策が進めば、死者は想定より9割減らせると見込む。国は24年度までに死者や全壊棟数の半減を目指している。

関東大震災を起こしたタイプのM8級地震なら被害はより大きくなるが、国が対策の主眼を置くのはM7級だ。M8級の30年以内の確率は「ほぼ0~5%」。過去の発生間隔は180~590年とされる。

長期的に街全体を強くする必要性も指摘されている。日本学術会議は23日、大都市については建物の耐震性を1.5倍程度まで上乗せする仕組みを導入すべきだとする提言を公表した。大都市への過度な集中の是正も合わせて求めた。

◆中小規模の地震にも備えを

大都市で多数が被災する状況では国や自治体などの「公助」には限界があり自らの備えが欠かせない。食料や水などの備蓄は最低3日、できれば1週間分が推奨されている。建物が無事で火事がなければ、自宅や職場にとどまることができる。家族との連絡方法を決めておき、むやみな移動は避けるなど、救援活動を妨げない心がけも大切だ。

東京・新宿地区の防災対策にかかわる工学院大の久田嘉章教授は、被害規模に応じた柔軟な対応の必要性を指摘する。「実際は中小規模の地震が起きる可能性の方がはるかに高い。東京が壊滅するならにげるしかないと、できる対策まであきらめるのはよくない」

被害は、どこが震源になるかや地盤条件、建物の強さにも左右される。無事であれば助ける側に回る仕組みをつくるなど、地域であらかじめできることはある。被害を最小限にとどめるためにも、家具の固定や建物の耐震化は大前提だ。

◆南海トラフ 観測強化へ調査 気象庁、モニタリング費要求

東海地震の想定震源域に限定していた観測体制について、気象庁は、東海地震を含む南海トラフの地域の全域の観測ができないか、調査を始める。

現在、静岡など3県27ヵ所に岩盤の変形を観測する「ひずみ計」が設置され、同庁は東海地震を予知する観測体制をとっている。一方、南海トラフの西側には観測網がなく、国の中央防災会議の作業部会も25日、東海地震の予知を前提とする防災対策を見直し、南海トラフ沿いの広い範囲で新たな防災計画を作ることを求める報告書案をまとめた。これを踏まえ、同庁は観測網の拡大を検討。現在、南海トラフ沿いでも観測を続ける他の研究機関などからデータの提供を受け、南海トラフ地震についても、東海地震と同程度の観測ができるかなどを調査する。

同庁は、モニタリング調査の費用など、来年度当初の予算の概算要求に約4200万円を盛り込んだ。

(2017年8月26日 朝日新聞記事より)

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